コーヒーの知識

おいしいコーヒーの淹れ方完全ガイド!ハンドドリップの基本レシピと知識

2024.08.23

コーヒーの味が安定しない?
ハンドドリップの難しさに悩んでる?
自分好みの味わいが見つからない?

豆は古くないし、素材も選んでいる。なのにお店と同じ味にならない。。
これすごくよく聞きます。

ハンドドリップの器具は他の抽出器具と比べても揃えやすく、自分の手でコントロールして淹れる楽しさも相まって、毎日のコーヒータイムにはもってこいの抽出方法です。

そんな日々ドリップするコーヒーがもし「当たり外れ」の連続だとストレスですよね。

基本的に同じコーヒー豆を使えば、湯量と豆量、そしてドリップのレシピが同じであれば、ほぼほぼお店と同じ味になります。

結論から言うと、ハンドドリップで一番重要なことは「湯量」「豆量」「レシピ」この3つを揃えることです。

手っ取り早くレシピだけ知りたい!という方は「コーヒー豆の焙煎度別 3つの美味しいレシピ」の好みの焙煎度のレシピから読んでもらえれば大丈夫です!

毎朝の一杯を格別な体験に変えて、台所を小さなカフェにしてしまいましょう!

ハンドドリップは誰でも習得できる!

コーヒーショップのロースター兼バリスタとして10年近く、数え切れないほどのカップを淹れ、さまざまな場所でドリップを教えてきた経験から断言できます。

ハンドドリップは誰でも習得できるスキルです

ハンドドリップの魅力は「シンプル」「楽しい」「おいしい」

特別高価な器具も魔法もいりません。
ハンドドリップの大会を目指しているとかでもない限り、初歩的な技術で本格的なコーヒーをすぐに淹れられるようになります。

ハンドドリップは奥が深く、お湯を注ぐ速度や強さ、使用するお湯の水質、コーヒーミルの刃の形状など細かいバロメータまで考慮すると大変ですが、それはもっと沼にハマってからのお楽しみにとっておきましょう。

あくまでも時間をかけずおウチですぐに再現できることが大切なので。

このコラムは、コーヒー豆の個性を最大限に引き出す焙煎度別の3つのドリップレシピを中心に、基本テクニックから、よくある失敗とその対処法まで、幅広く紹介するハンドドリップの完全ガイドです。

後日、中級者向けにハンドドリップでできる味の調整テクニックも公開する予定です。

時々加筆修正などもしていく予定ですので、ぜひ保存版としてブックマークして何度も見返してください!

難しい専門用語や特別な器具、プロが大会で使用するようなテクニックは極力出さないようにしています。

あくまで初歩的な理論とテクニックですが、できる限りは網羅してますので、ざっと目を通してもらうだけでもハンドドリップに対する理解が深まると思います。

ハンドドリップを理解するためには技術よりも最低限の理屈を知っておいた方が、よりコーヒーを自分自身のカスタムで深く楽しめるようになるという考えから、色々と掘り下げて書いています。

少し長くなりますが、ぜひお付き合いください。

ハンドドリップの基本知識:美味しさの秘訣

ハンドドリップは誰でも習得できるスキルと書きました。そのスキルを使えばたった数分で、豆から香り高い一杯を抽出することができます。

でも、そのスキルを自在に操るには、いくつかのコツがあります。

それらコツさえ掴めば、誰でも美味しいコーヒーがドリップで淹れられるようになります。

ここからは、ハンドドリップの基本テクニックを詳しく見ていきましょう。これらを押さえれば、あなたも家庭で極上の一杯を楽しめるはずです。

  • ドリップの定義と種類
  • 温度管理の重要性
  • 挽き方の影響
  • 豆の選び方のポイント
  • 抽出の黄金律

そもそもハンドドリップとは?

ハンドドリップは、コーヒーを淹れる方法の中でもシンプルで伝統的な方法です。お湯を手で注ぐことで、豆の個性を引き出します。

ちなみにハンドドリップは英語で「Pour over coffee」(プアオーバーコーヒー)とも言います。最近のコーヒーショップではこっちの言い方の方がよく見るかもしれません。
ハンドドリップは和製英語っぽい響きですが、海外でも普通に通じるそうです。

ハンドドリップの正確な誕生時期は不明ですが、コーヒーフィルターの発明が大きな転機となりました。1908年にドイツのドレスデンに住むメリタ・ベンツが紙を使用したコーヒーフィルターを発明し、これによりハンドドリップの基礎が築かれました。

メリタは今も世界的なコーヒーブランドとして有名ですよね。

https://www.melitta.co.jp/about/history.html(メリタとコーヒー進化のストーリー : メリタジャパン)

機械に任せるのではなく、自分の五感を使ってコーヒーと向き合う。そんな魅力がハンドドリップにはあります。まるで、手の動きと香りを通して豆と対話しながらコーヒーを淹れているような感覚さえあります。

そもそもコーヒーの抽出方法にはいくつか種類があります。大きく分類すると「透過式」と「浸漬式」に分けられます。どちらも美味しいコーヒーを淹れられますが、特徴が少し異なります。本筋ではないのでざっと簡単に触れておきます。

様々な抽出方法

  • ネルドリップ(透過式)
  • フレンチプレス(浸漬式)
  • エスプレッソ(透過式+水圧)
  • サイフォン(浸漬式+蒸気圧)
  • エアロプレス(浸漬式+空気圧)

などなど

透過式による抽出

透過式は、みなさんが想像するいわゆる「ハンドドリップ」です。ペーパーフィルターを使って、お湯を少しずつ注いでいきます。

この方法の魅力は、クリアでクリーンな味わいが楽しめること。豆の繊細な風味や酸味を感じやすいのが特徴です。

浸漬式による抽出

浸漬式は、粉とお湯を一定時間接触させる方法です。フレンチプレスがその代表格ですね。

この方法は、コーヒーオイルを含んだ、まろやかな味わいが特徴です。豆の持つ深みや甘みを存分に引き出せます。

個人的には、浅煎りよりも深煎りの豆を楽しむときに使ったりします。でも、微粉が少し残るので、その食感が苦手な人もいるかもしれません。好みが分かれやすい抽出方法です。

お湯の温度が及ぼす影響

お湯の温度はコーヒーの味を大きく左右する重要な要素の一つです。温度が高すぎるとテイストが強くなりすぎ、低すぎるとテイストが弱くなってしまいます。

誤解されがちなのですが、よく沸騰したてなどの高温のお湯をドリップに使うと「コーヒーが焦げる」と言われたりする場合があります。

比喩としては分かるのですが、高温のお湯がコーヒーの苦味成分を特別引き出すわけではなく、テイスト成分の抽出速度が早まるだけです。

結果、抽出の後半に出てくる苦味成分が想定より早く出てきてしまい、コーヒーが苦くなる場合があるというわけです。

ハンドドリップでの理想的な温度は86度〜96度。でも、これは豆の焙煎度合いによっても変わってきます。浅煎りなら高め、深煎りなら少し低めがおすすめです。

当店では、ハンドドリップの際、温度調整機能付きのケトルを使って湯温を管理していますが、家庭では沸騰させたお湯を1分ほど置くかカップを湯煎してケトルに戻すといい感じの湯温になります。慣れてくると、経過した時間でなんとなく判断できるようになります。

  • 高温:テイストが強くなる
  • 適温:バランスの取れた味わい
  • 低温:テイストが弱くなる

粉の細かさが及ぼす影響

粉の細かさも、コーヒーの味わいを大きく変える要素です。細かくすればするほどフレーバーは強く、質感はクリーミーになり、粗くすればするほど、フレーバーは弱く、質感はさらっとしていきます。

ドリップ用ならグラニュー糖ぐらいの大きさの中細挽きが基本。でも、豆の種類や焙煎度合いによって少し調整が必要です。例えば、酸味を抑えたいなら少し細かめに、逆に苦味を抑えたいなら粗めにするといった具合です。

挽き方を変えるだけでも、同じ豆でも全く違う味わいになったりします。これが、コーヒーの奥深さですよね。当店でも、コーヒー豆の焙煎度合いやお客さんの好みに合わせて挽き方を変えています。

  • 細く挽く:フレーバーと質感が強くなる
  • 中細挽き:ちょうど間
  • 粗挽き:フレーバーと質感が弱くなる

コーヒー豆の選び方

ドリップするコーヒー豆を選ぶ基準は2つあります。

  1. 焙煎から日にちの経っていない新鮮なもの(エイジングも考慮して焙煎日から1週間以内がベスト)
  2. できれば豆のまま購入する

コーヒーの香気成分は揮発性です。焙煎日から日にちが経つほど味わいは抜けていきます。

また、コーヒー豆に含まれる油分が日にちの経過ごとに酸化していきます。古くなった豆は風味が抜けているだけでなく、油分の酸性化によって、酸っぱくなっていたり、嫌な苦味が出てきたり、胃もたれや頭痛の原因にもなります。

上の2つの基準を満たしているお店であれば、後は銘柄選びですが、気になる生産国や農園名で選んでもいいですし、香りがチェックできたり試飲できたりする場合はぜひお願いしてみましょう。

そのお店のブレンドや、スタッフにおすすめを聞いて買ってみるのも良いと思います。

Encore! Coffee Roasteryのオンラインショップではご注文を受けてからその都度焙煎していますので、どの銘柄のコーヒー豆も新鮮なものをお届けします。日にちの経過による味わいの変化もぜひお楽しみください。

あくまで目安ですが、おいしく飲めるコーヒー豆の期限は焙煎からだいたい浅煎りで1ヶ月から2ヶ月まで、深煎りで3週間から1ヶ月まで。

市販のコーヒー豆だと焙煎日が記載されておらず、賞味期限のみ記載しているものもありますが、コーヒー豆に関しては焙煎日から1年間で設定されていることも多く、あまり参考にはなりません。

※粉で購入する場合は劣化が早まりますので1〜2週間ほどで飲み切りましょう。

  • 新鮮さを重視
  • 焙煎度合いを選ぶ
  • 生産国や農園で選ぶ
  • 香りをチェック

キーワードは「抽出レシオ」「蒸らし」「3分以内」

ハンドドリップの基本を押さえるなら、この3つのキーワードを覚えておくと便利です。まず「抽出レシオ」。これは豆と水の比率のこと。抽出比率とかBrew Retio(ブリューレシオ)とも言います。こっちの方が一般的かも。

ご家庭で淹れるハンドドリップのコーヒーが安定しないひとつの原因は、この比率が安定していないこと。

一般的にはホットコーヒーの場合は1:15前後がバランスがいいです。

抽出レシオの活用例
・コーヒーの粉が14gであれば、そそぐ湯量は210g
・淹れたいコーヒーの量 ÷ 15 = 使用するコーヒー豆の量

薄く感じたら抽出レシオを1:14にしたり、濃く感じたら1:16にしたりして調整できます。

次に「蒸らし」。最初にお湯を少量注いで30秒ほど待つ工程です。
蒸らしはブルーミング(Blooming)とも呼ばれるハンドドリップでもっとも重要な工程の一つ。
蒸らしをせずに注ぎ続けると、豆のガスがうまく抜けず、抽出の効率が悪くなり、思ったような風味が出ません。
粉全体にお湯をかけて、しっかりと成分が出てくる下準備をしましょう。

コーヒーの蒸らしについてはこちらの記事でも詳しく触れています。
「コーヒーが蒸らしで膨らまない本当の理由と改善ポイント」(Encore! Coffee Roastery)

コーヒーの蒸らし
コーヒーの蒸らし。表面の白っぽいのが豆内部の炭酸ガス。

最後のキーワード「3分以内」。ハンドドリップでの抽出時間は2分から3分以内が理想的です。短すぎるとテイストが弱くなりますし、長すぎると雑味まで抽出されてしまいます。

抽出時間 = 粉にお湯が触れて成分が抽出されている時間

コーヒーの抽出される成分の順番はだいたい決まっていて、

・酸味→甘さ→苦み→雑味やえぐみなどのネガティブな要素

この順番に成分が抽出されます。
なので抽出時間が長すぎると後半の苦味の比率が多くなり、雑味やえぐみも抽出されるようになります。そうなる前に抽出を終えてドリッパーを外しましょう!

ただ短すぎるとテイストが弱く、酸味が際立ちます。ようはバランスです。

覚えておきたいキーワード

  • 抽出レシオ(豆とお湯の比率) 1:15前後
  • 蒸らしで香気成分が花開く(ブルーミング)
  • 3分以内に淹れ終わる

次の章からはコーヒーの焙煎度別に当店が組み立てたドリップレシピを紹介していきますが、その前に動画で実際のドリップの動きを予習しておきましょう。

ホットコーヒー1杯分のレシピ動画

次に紹介する焙煎度別レシピの「中煎り」と同じ内容です。
焙煎度がよく分からないという場合もこちらのレシピを参考にしてみてください。

コーヒー豆の焙煎度別 3つの美味しいドリップレシピ

焙煎度によって、コーヒーの味わいは大きく変わります。これは豆に含まれる炭酸ガスの量や香気成分のバランスが関係しています。

浅煎りから深煎りへと進むにつれ、豆の中の炭酸ガス量が増えていきます。同時に、香りの特徴も変化していきます。

当店では、この焙煎度の違いに合わせてドリップのレシピを組み立てていますので、ご紹介します。

ご家庭で抽出温度を測ることは難しいと思いますので、湯温はある程度幅を持たせています。

ちなみにケトルに入れたお湯がどれぐらいの時間で適温に下がるのかは、こちらのサイトの実験を参照しました。温度計がない場合は参考にしてみてください。
https://iwamoto-hiroyoshi.com/tea/150714t/(お湯の温度の下がり方 | 岩本博義 公式サイト)

  • 華やかな香りを楽しむ方法
  • バランスの取れた味わい方
  • 深みのある風味の引き出し方

浅煎りコーヒーの爽やかな酸味を楽しむドリップレシピ

浅煎りコーヒーは、硬めで豆の中の炭酸ガスが少ないのが特徴です。苦味は少なく、明るく心地よい酸味があります。

香気成分は華やかでフルーティ。まるで花畑を歩いているような、爽やかな香りが広がります。このレシピでは、その特徴をハンドドリップで最大限に引き出すことを目指します。

ポイントは、やや高めの抽出温度と細めの挽き方です。苦味が出る前にさっと抽出を終わらせるイメージですが、蒸らし時間はやや長めにとります。これにより、豆の繊細な風味をしっかりと抽出できます。

水温:90〜96度(沸騰から1分半置く)
挽き方:中細挽き(グラニュー糖よりやや細かく)
抽出時間:2分10秒
抽出レシオ 豆:水=1:16
蒸らし時間:40秒

お湯:210g
豆:13g

手順:210gのお湯を4回に分けて注ぎます。
40g 蒸らし(粉全体にお湯が行きわたるように注ぎ、40秒間待ちます)
120g (+80g) 40秒 - 1分10秒
180g (+60g) 1分10秒 - 1分35秒
210g (+30g) 1分35秒 - 1分50秒
落ち切るまで待ってドリッパーを外す - 2分10秒

ポイント
効率よく均等に抽出するために、粉の中心付近にお湯をゆっくり注ぎ、液面が下がってきたら次のお湯を注ぎます。
温度が90〜96度と幅がありますが、高地産の硬めのコーヒー豆は成分が出てくるスピードが遅いので、96度前後まで上げるとしっかり抽出されます。高地産の浅煎り豆は明るい色の豆の表面に黒っぽい皺があるので、判別しやすいです。

浅煎りのおすすめ豆

中煎りコーヒーでバランスの取れた味わいのドリップレシピ

中煎りコーヒーは、炭酸ガスの量も香気成分のバランスも絶妙です。酸味と苦味のハーモニーが楽しめます。

このレシピでは、そのバランスの良さを活かしつつ、豆の持つ複雑な風味を引き出します。

ポイントは、ドリップの前半に抽出される酸味と甘み、後半に抽出される苦味をバランスよく引き出し、もっとも心地よいテイストを目指します。

水温:88〜90度(沸騰から3分置く)
挽き方:中細挽き(グラニュー糖ぐらい)
抽出時間:2分10秒
豆:水=1:15
蒸らし時間:30秒

お湯:210g
豆:14g

手順:210gのお湯を4回に分けて注ぎます。
40g 蒸らし(粉全体にお湯が行きわたるように注ぎ、40秒間待ちます)
100g (+60g) 30秒 - 55秒
160g (+60g) 55秒 - 1分30秒
210g (+50g) 1分30秒 - 1分50秒
落ち切るまで待ってドリッパーを外す - 2分10秒

中煎りのおすすめ豆

深煎りコーヒーの濃厚な風味を引き出すドリップレシピ

深煎りコーヒーは、豆の中の炭酸ガスが多いのが特徴です。そのため、抽出時に独特の苦味とコクが生まれます。

香気成分は、チョコレートやナッツ、ベリーのような香ばしさが際立つものもあります。このレシピでは、その濃厚な風味をしっかりと引き出すことを目指します。

ポイントは、やや低めの抽出温度と粗めの挽き方です。これにより、過度の苦味を抑えつつ、コクと甘みを引き出せます。炭酸ガスが多いので、しっかりと蒸らすのがコツです。

水温:84〜86度(沸騰から4分置く)
挽き方:中粗挽き(グラニュー糖よりやや大きい)
抽出時間:2分25秒
豆:水=1:15
蒸らし時間:45秒

お湯:210g
豆:14g

手順:210gのお湯を5回に分けて注ぎます。
40g 蒸らし(粉全体にお湯が行きわたるように注ぎ、45秒間待ちます)
80g (+40g) 40秒 - 1分00秒
120g (+40g) 1分00秒 - 1分20秒
160g (+40g) 1分20秒 - 1分40秒
210g (+50g) 1分40秒 - 2分05秒
落ち切るまで待ってドリッパーを外す - 2分25秒

深煎りのおすすめ豆

道具選びのポイント:ドリップのおいしさを左右する3つ

道具選びって、ワクワクしますよね。特にコーヒー系の器具やマシンは日々進化していますし、数え切れないほどの種類があります。

高い道具を使えば良いというわけでもなく、コスパの良い道具でもプロ級のハンドドリップコーヒーを淹れることは可能です。

当店でも、お客様から道具選びの相談をよく受けます。大切なのは、自分のスタイルに合った道具を選ぶこと。

ここからは、美味しいコーヒーをハンドドリップで淹れるための4つの重要な道具について詳しく見ていきましょう。

  • コーヒーの味を決めるドリッパー
  • お湯の注ぎ方を左右するケトル
  • 挽き具合で風味が変わるミル
  • 味の濃さを調整するフィルター

ドリッパーの形状と材質

ドリッパーは、ハンドドリップコーヒーの抽出を左右する重要な要素です。形状によって、お湯の流れ方や抽出時間が変わってきます。

円錐形のドリッパーは、お湯の抜けがよく、クリーンな味わいになります。一方、平底のドリッパーは、粉に均等にお湯が触れやすく、お湯の保持力もあるのでコク深い甘みが引き出しやすいです。

Encore! Coffee Roasteryで使っている三洋産業のフラワードリッパー

材質でも違いが出ます。セラミック(陶磁器)やガラス製は保温性が高く、プラスチックは軽くて扱いやすい。金属は耐久性が高い反面、お湯の温度管理に注意が必要です。

Encore! Coffee Roasteryはフラワードリッパーという円錐型のプラスチックのドリッパーを使用しています。軽くて扱いやすく、花びらのような可愛らしい形状は蒸らしの際にもしっかりとガスを逃すスペースがあります。お湯の抜けもよく、新鮮な豆やスペシャルティコーヒーのドリップに向いていると思います。

  • 円錐形:クリーンな味わい
  • 平底:コク深い甘み
  • セラミック・ガラス:保温性が良い
  • プラスチック:軽量で扱いやすい
  • 金属:耐久性がある

ケトルの注ぎ口の細さと形状

ケトルは、ドリップのお湯の注ぎ方を左右する重要なアイテム。特に注目したいのは、注ぎ口の細さと形状です。

細い注ぎ口のケトルは、お湯の量をコントロールしやすく、粉全体に均一にお湯を注げます。まるで、コーヒー粉に細かい雨を降らせるようなイメージですね。

また、注ぎ口が長いケトルは、粉に近づいてお湯の勢いを抑えられるので、粉を荒らさずにゆっくりと注げます。

ちなみに当店はハリオの温度調整機能付きドリップケトルを使っています。

50度から96度まで1度単位で温度調整可能。グースネックの注ぎ口は粉の表面まで近づけるので、意図しない粉の撹拌が起きにくい。
  • 細い注ぎ口:お湯の量を精密に制御
  • 長い注ぎ口:お湯の勢いを抑える
  • 温度調整機能付き:抽出温度を簡単に変更できる

ドリップに適したコーヒーミル

コーヒーミルは、豆の挽き具合を決める大切な道具です。挽き具合によって、コーヒーの風味が大きく変わります。また淹れる直前に挽くことによってコーヒー豆の劣化も大幅に遅らせることができます。

電動ミルはたくさんの豆でも簡単に挽けて、コーヒーがすぐ飲めますが比較的高価です。一方、手動ミル(手挽きミル)は時間はかかりますが、粒度が揃いやすく比較的安価です。

電動ミルを選ぶ場合は、安価なプロペラ式のミルだけはやめておいた方が無難です。底にミキサータイプの刃が付いたコーヒーグラインダーなのですが、粒度を揃えるのに一苦労します。また大きい粒と微粉とに分かれやすいので、薄いのに苦味を感じる、みたいなコーヒーになりがちです。

自動で淹れてくれるミル付きのコーヒーメーカーも安価なものはプロペラ式のミルになっている場合が多いので、要確認です。

刃の種類はコニカル式、臼式、フラットディスク式など様々あって、特徴も違うのですが、プロペラ式以外であればとりあえず問題ないです。

電動ミルだと臼式が比較的安価。手挽きミルの場合はほとんどコニカル式です。

当店はハンドドリップの時はフジローヤルのみるっこという愛らしい名前のミルを使っていますが、家庭用としては結構高価なんですよね。。

家庭用でおすすめのコスパの良いミルは、電動ならカリタのナイスカットミル、手挽きならTimemore C2です。

正直コーヒーミルは上を見ればキリがないので、この辺りが耐久性と性能でいうとベストバイな気がします。

ミルにそんなにお金かけられない。たまにしかハンドドリップはしない。と言う場合は3千円ぐらいのハリオのセラミックミルやダイソーの500円ミルでも大丈夫です。

ペーパーフィルターの選び方

ペーパーフィルターも今は様々な種類が出ていて、コーヒーの味わいに大きく影響します。厚さや材質によって、抽出される成分バランスが変わります。

とりあえずはドリッパーの形に合うコーヒーのメーカーが販売している白色のペーパーフィルターを選べば間違いないです。

漂白された白いものと無漂白のみさらしタイプのものがありますが、香りと味わいを重視するなら白色一択です。
漂白といっても塩素ではなく酸素漂白で、完成品はもちろん人体に無害です。

無漂白の方は紙の臭いがきつく、ハンドドリップした後のコーヒーの風味に大きな悪影響がでます。気になる方は一度無漂白の茶色いペーパーフィルターにお湯だけ通して、飲んでみてください。味も臭いも大きく変わっていることが分かると思います。

また無漂白の方が環境や体にやさしいと思われることが多いですが、製造の際、漂白タイプ以上に大量の水と製造コストを要しますし、リグニンという有色の化合物が完全には除去されていないので、これが水への着色や臭いの原因になったりします。

ちなみにEncore! Coffee Roasteryではハンドドリップの時は、三洋産業さんのアバカフィルターを使用しています。
アバカと呼ばれるマニラ麻の繊維を編み込んだフィルターで、材料の一部が非木材で環境に配慮していること、お湯の抜けがよく後半の湯だまりができにくいこと、そして何より紙の臭いがほとんどしないという点が気に入っています。

お値段も普通のフィルターよりやや高いぐらい。

ハンドドリップの大会で使用する選手も多く、いまや多くのスペシャルティコーヒーショップで使われているフィルターです。

後はスケールとタイマーも必要です。ドリップ専用のスケールであればタイマーも付いていて便利ですが、デジタルのキッチンスケールとスマホのタイマーの組み合わせでも最初は大丈夫です。スケールはできれば0.1g単位のものを選んだ方が味は安定します。

失敗しないハンドドリップ:よくある5つのミス

ハンドドリップって、一見シンプルそうに見えて、奥が深い抽出方法です。自分でコントロールできる変数が多いので、うまく淹れられなかったとき、どこが悪かったのかを探るのも結構大変だったりします。

ここでは、ハンドドリップでやりがちな失敗を要素ごとに分けてその対策を見ていきましょう。

  • 粉とお湯のバランスがイマイチ
  • お湯を注ぐタイミングが早すぎる
  • 湯温が適切じゃない
  • 抽出時間が長すぎるか短すぎる
  • 粉が細かすぎるか粗すぎる

粉の量と水の比率が不適切

抽出レシオのところで触れましたが、ハンドドリップコーヒーの美味しさの基礎は、粉とお湯のバランス。薄すぎると物足りなさを感じ、濃すぎると苦みが前面に出てしまう。シーソーに乗るみたいに、絶妙なバランスを見つけるのが大切です。

当店でも、新しいコーヒー豆を試す時は、必ずこの抽出レシオの調整から始めます。まずは、基本のレシピを参考に、粉の量とお湯の比率を正確に測ることからスタートしてください。

抽出レシオの基本は豆:水 = 1 : 15

そして、自分の好みに合わせて少しずつ調整していくのがおすすめです。コーヒー豆の種類や焙煎度によっても最適な比率は変わるので、焙煎度別ドリップレシピを参考に色々試してみて、自分だけの「黄金比」を見つけてみてください。

お湯を注ぐタイミングが早すぎる

ハンドドリップは、ある意味でコーヒー豆との対話みたいなもの。返答を待たずに次のお湯を注いではダメです。お湯を注ぐタイミングが早すぎると、コーヒー豆が十分に蒸らされず、成分が十分に引き出せないまま抽出されてしまいます。

せっかくのコーヒー豆が、まるで眠りから覚めないまま、舞台に立たされてしまうようなものです。

蒸らしの時間は、コーヒー豆の種類や焙煎度によって異なりますが、一般的には25秒から50秒ほど。この間、コーヒー豆はお湯をゆっくりと吸収し、炭酸ガスを放出しながら膨らんでいきます。

この膨らみのピークと放出される泡が落ち着いたら準備OK!のサイン。このサインを見逃さずに、次のステップに進みましょう。

2投目以降もレシピにもよりますが、基本はお湯を注いである程度水面が沈み始めてから次のお湯を注ぎます。水嵩を増していくように次々と注いでしまうと、抽出効率が下がり、成分が十分に引き出されません。

湯温が低すぎるか高すぎる

お湯の温度もハンドドリップコーヒーの味わいを左右する重要な要素の一つ。低すぎると、コーヒーの成分が十分に抽出されず、酸味が強く、物足りない味に。逆に、高すぎると、苦みや渋みが強調され、せっかくの風味が損なわれてしまいます。

まるで、お風呂のお湯加減みたいに、そのコーヒー豆にとってのちょうど良い温度を見つけることが大切です。

一般的には、86度から96度くらいのお湯が最適とされています。でも、コーヒー豆の種類や焙煎度によって、ベストな湯温は変わってくるので、色々試してみるのがおすすめです。温度計を使って細かく調整するのも良いですが、沸騰したお湯を少し冷ますだけでも、十分美味しいコーヒーをドリップすることができます。

ケトルのお湯の温度変化

  • 沸騰から1分半で約96度(浅煎り向き)
  • 沸騰から3分で約90度(中煎りから中深煎り向き)
  • 沸騰から4分で約86度(深煎り向き)

抽出時間が長すぎるか短すぎる

ドリップの抽出時間は、コーヒーの濃度を左右する重要なポイント。長すぎると、雑味や渋みまで抽出されてしまいます。お茶っ葉を入れっぱなしにして、渋くなってしまった経験に近いです。抽出時間を適切にコントロールすることで、クリアで美味しいコーヒーをドリップすることができます。

抽出時間の目安は、コーヒー豆の種類や焙煎度、粉の量によって異なりますが、一般的には2分から3分ほど。抽出時間が長くなると、コーヒーの味が濃くなり、苦みや渋みが強くなってしまいます。

逆に、短すぎると、コーヒーの味が薄くなり、相対的に酸味が際立ちます。タイマーを使って時間を計りながら、ドリップの抽出時間を調整してみましょう。

粉が細かすぎるか粗すぎる

コーヒーの粉の細かさ(メッシュと言います)は、コーヒーの味わいに様々な影響を与える要素です。

具体的に言うと、粉の細かさを変えるだけでフレーバーの強さ、質感の強さ、そして成分の抽出量に影響が出ます。

基本的にハンドドリップに適したコーヒーの粉の細かさはグラニュー糖のサイズ前後です。

例えばエスプレッソを淹れるときのような砂みたいに細かいメッシュにしてしまうと、まずお湯を注いでもフィルターが目詰まりを起こし、なかなかコーヒーが落ちてきません。
ようやく淹れ終わったコーヒーは成分が出過ぎた過抽出の状態で、強い酸味や苦味、エグ味や雑味も入り混じった味わいになります。

逆にメッシュが粗すぎると今度は成分の抽出量が少なすぎて、いわゆる未抽出の状態になります。
よく言えばマイルドなのですが、場合によっては深煎りだと少し苦いお茶のようだったり、浅煎りだと草っぽかったりと濃度も風味も足りない平坦な味わいになる可能性があります。

コーヒー豆を挽く前にだいたいグラニュー糖の大きさになるようにミルを調整するか、豆を買ったコーヒーショップでハンドドリップに適した挽き目の見本をもらうのも手です。

美味しいハンドドリップへの道のり

ハンドドリップの基本テクニック、コーヒー豆の焙煎度別レシピ、道具選びのポイント、失敗しないコツ、味の調整テクニックについて紹介しました。

  • 適切な粉と水の比率を守る
  • 水温と抽出時間を意識する
  • 蒸らしの重要性を理解する
  • 自分好みの味に調整する

これらのポイントを押さえるだけで、いつものコーヒーが格段に美味しくなります。最初は少し難しく感じるかもしれませんが、コツを掴めばハンドドリップは案外簡単です。

上記のポイントで共通しているのは、測ることの大切さ。
慣れてくれば一回一回測らなくても、大体感覚で淹れてもおいしくなったりしますが、感覚をつかむまではお菓子作りのレシピのように測った方が絶対に良いです。

何度か試してみれば、きっと自分だけのとっておきのコーヒーがドリップできるようになるはずです。

ぜひ何度でも戻ってきてください。コーヒーの抽出理論の中のペーパードリップの触りだけですが、全部なんとなく分かったときにはさらにコーヒーは楽しくなっていると思います。

もっとコーヒーについて知りたい方は、他のコーヒーコラムもチェックしてみてください。

それでは素敵なコーヒーライフを!

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