コーヒー

香味と焙煎 〜風に吹かれるコーヒー

2023.01.24

香味と焙煎についてちょっとだけ。

コーヒーには約800種類の香気成分が存在しています。

お湯を注いだコーヒー粉から立ち上るアロマ

もちろん、一つの焙煎豆にそれだけの数が内包されているというわけではなく、焙煎の過程でメイラード反応やカラメル化反応などを通して、揮発して無くなるものや新たに生まれるものもあります。

コーヒーは回る焙煎機の釜の中で常に変化し続けているんですね。ボブ・ディランじゃないけれど、豆は釜の中で熱された風に吹かれているし、石のように転がり続けています。

そこで生まれた香気成分が複雑に絡み合い、甘味、苦味、酸味などの味覚、サラッとした感じやトロッとした感じなどの質感、そしてそのコーヒーを大きく特徴付ける風味が形成されます。

あの薄緑色の生豆が一定の熱のコントロールによって、例えばナッツやダークチョコレートのような香ばしい風味や、瑞々しい果汁感が生み出されたりするわけで、未だに不思議な飲み物だなぁと思ったりします。

基本的には同じ銘柄であれば、毎回ベストコンディションを目指して焙煎していますが、毎回きっちりと同じ煎り上げにすることは不可能です。豆の大きさ、水分値、外気温なども少しずつ影響してくるからです。

だからこそ焙煎中はあらゆる変化に気を配り、ある意味で対話をするように焙煎しています。

なんだか子育てみたいだとも思う。

言葉も通じない中で、色んなことに気を配りながら、五感で対話する。成長していく日々の中では今日の常識が明日には通用しないかもしれない。

ちなみに焙煎後のコーヒー豆も揮発などにより、ゆっくりと、確実に成分が変化していきます。日に日に減るものもあれば増えるものもある。

厳密に言うとまったく同じフレーバーのコーヒーには二度と出会えないということ。

見た目は同じように見える、今だれかが台所で淹れたグァテマラのコーヒーも、明日には少しだけれどミクロの世界で変わっています。

昨日と今日で中身も外見もすべてが同じ人が存在しないように。

今日は昨日飲んだコーヒーとどこか少し違うな、とか思いながら飲むのも面白いかもしれない。
完璧に淹れることを目指さなくてもコーヒーはそれなりに応えてくれます。

変わらない日々の中でいつものカップに注がれたそのコーヒーの微細な変化もぜひお楽しみください☕️

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