コーヒーの知識

コーヒーの苦味とは?良い苦味と悪い苦味を知る

2024.05.08

苦味はコーヒーから感じる特徴的な味覚の一つです。多くの人々はこの苦味をコーヒーの魅力の一つと考えていますが、一方で苦手とする人も少なくありません。この苦味は単なる味覚だけの問題ではなく、コーヒー豆の種類、焙煎の度合い、抽出方法によって様々な変化を遂げる複合的な現象です。
今回の記事ではコーヒーの苦味とは何かという点と、苦味が生まれる科学的なプロセスを紹介します。最初に結論を言うと、コーヒーの苦味は個人の味覚や好みにも大きく左右されるものです。飲む人によっても苦味を感知する受容体の機能が異なるため、苦味が感じにくい人、苦味を人一倍感じる人と個人差もあります。なのでそこからさらに踏み込んで、コーヒーの苦味を調整し、より楽しむための方法にも触れていきます。コーヒーの苦味についての総まとめになっていますので、ぜひ最後までお付き合いください!

コーヒーにとって良い苦みと悪い苦み

コーヒーの苦みには「良い苦み」と「悪い苦み」があり、その違いは主に原料となるコーヒー豆の性質や品質、焙煎の方法、そして鮮度によって決まります。

1. 良い苦み: 良い苦みは、適切に焙煎された高品質のコーヒー豆から生じます。この苦みは、コーヒーの風味を豊かにし、深みや複雑さを加える要素として重要です。例えば、ダークローストの豆は強い苦みを持ちますが、それはコーヒーの風味の一部としてバランスが取れています。

2. 悪い苦み: 一方で、悪い苦みは焙煎が不適切であったり、豆の品質が低かったり、焙煎後時間が経過した古い豆を使用した場合に生じます。この苦みは不快で、コーヒーの他の風味を打ち消すことがあります。例えば、オーバーローストされた豆は焦げたような苦味があり、品質が落ちる原因となります。

焙煎豆の鮮度との関係:
- 新鮮な焙煎豆は、良い苦みを持ちやすいです。焙煎後、コーヒー豆は時間とともに風味が変化し、ある一定の期間まではポジティブな変化と捉えることができます。ただ、一定期間以上酸化が進むと尖ったような苦味や酸味が強くなります。
- 古い豆は酸化が進みやすく、これが悪い苦みの原因となり得ます。したがって、鮮度が高いコーヒー豆を使用することは、良い苦みを楽しむための一つの方法です。

具体的には深煎りのコーヒー豆は豆の状態で3週間から1ヶ月、浅煎りのコーヒー豆は豆の状態で1ヶ月から2ヶ月程度で使い切ることが良い苦味を含んだ風味を楽しむことができる目安になります。

コーヒーを淹れる際には、適切な方法で焙煎された新鮮な豆を使用し、良い苦みを引き出すことが大切です。

コーヒーの苦味の種類と要因

コーヒーの苦味を感じる要因には、主に次のような化学的な要素が関わっています。

1. カフェイン: コーヒーの苦味の主要な原因の一つ。カフェインは苦味を持つアルカロイドで、刺激的な味が特徴です。苦味への寄与率は10%から30%程度と言われています。
2. クロロゲン酸: コーヒー豆に含まれるポリフェノール類。これも苦味に寄与します。焙煎が深く進むほど量も増えていきます。
3. トリゴネリン: コーヒー豆に含まれるアルカロイドで、独特の苦味をもたらします。苦味への寄与率は低いです。
4. メラノイジン: 焙煎過程の後半で形成される化合物。焙煎度が高いほど、メラノイジンの量が増え、苦味が強くなります。

コーヒーの成分についてもっと詳しく知りたい方はリンクを貼っている全日本コーヒー協会のページをご覧ください。

https://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/library/facts(全日本コーヒー協会)

コーヒーの焙煎度によっても苦味は異なります。例えば、エスプレッソやダークローストのコーヒーは、通常、ライトローストや中煎りのコーヒーよりも苦味が強いです。

味覚の面から見ると、人間の舌は苦味を主に舌の後方で感じます。舌には味蕾があり、それぞれが甘味、酸味、塩味、苦味、旨味を感じることができます。苦味は舌の最も奥の部分に集中している味蕾によって感知されます。これは進化的に、毒性のある物質を識別し、摂取を避けるためとされています。ここの苦味への受容体が強いと人一倍苦味を感じる場合があります。

焙煎によって生まれる苦味

コーヒー豆の焙煎時間、火力、温度上昇率などは、コーヒーの苦味に大きく影響します。これらの要素を理解することで、コーヒーの味わいをより深く楽しむことができます。

  1. 焙煎時間: コーヒー豆の焙煎時間が長いほど、一般的に苦味が強くなります。焙煎は豆内の化学反応を引き起こし、味と香りを変化させます。短時間の焙煎では酸味やフルーティーな風味が強調されますが、長時間焙煎するとカラメル化や糖分の分解が進み、苦味が増します。
  2. 火力: 火力が強いと、焙煎が速く進みます。火力が強すぎると、外側は焦げて苦味が強くなりつつも、内部は十分に発達しない可能性があります。薄いのにツンとした苦味があるようなコーヒーです。逆に火力が弱すぎると、焙煎が均一に進まず、風味が十分に形成されません。
  3. 温度上昇率: 温度が急速に上昇すると、豆の外側が早く焼けて苦味が強くなることがあります。一方で、温度をゆっくりと上昇させることで、焙煎が均一に進み、豆の内部まで熱が伝わりやすくなります。これにより、味わいのバランスが取れたコーヒーになります。

要するに、コーヒーの苦味は、焙煎時間が長いほど、火力が強いほど、そして温度上昇が急激であるほど強くなる傾向にあります。しかし、これらの要素はバランス良く管理されることが重要で、苦味だけでなく、酸味や香り、ボディ感など、コーヒーの全体的な味わいに影響を与えます。

表面の焦げ

コーヒーの苦味とコーヒー豆の表面の焦げは密接に関連しています。この関連性を理解するためには、まずコーヒーの焙煎プロセスとそれがフレーバーにどのように影響するかを理解する必要があります。

コーヒーの苦味と焦げの関連性
焙煎度合い: コーヒー豆の焙煎度合いは、苦味の強さに直接影響します。深煎り(ダークロースト)になるにつれて、豆の表面はより焦げて苦味が強くなります。これは、焙煎過程で糖が分解され、複雑な化学反応が起こるためです。深煎りでは、メイラード反応と呼ばれる化学反応がより進み、これが豆の苦味や風味に影響を与えます。

化学反応: 焙煎中に起こる化学反応は、コーヒー豆の風味プロファイルを形成します。メイラード反応は、糖類とアミノ酸の反応により、コーヒー豆に苦味、香ばしさ、ボディ感をもたらします。豆の表面が焦げると、これらの化学反応が加速され、苦味が増すことがあります。

焙煎時の注意点
私たちロースターは、理想的な焙煎度合いを達成し、不必要な焦げを避けるために、以下のような点に気を付けています。

温度管理: 焙煎過程の温度は、コーヒー豆の焦げや味のバランスに大きく影響します。ロースターは、焙煎初期には温度を徐々に上げ、適切なタイミングで熱を抑えることで、均一な焙煎と過剰な焦げを防ぎます。

時間管理: 焙煎時間も重要です。あまりにも長い時間焙煎すると、風味を形成するための成分が必要以上に揮発してしまい、豆は過剰に焦げて苦味が強くなります。ロースターは、焙煎の各段階での時間を厳密に管理し、特定の焙煎度合いに達したら迅速に冷却することで、オーバーローストを最小限に抑えます。

冷却プロセス: 焙煎が完了したら、コーヒー豆を迅速に冷却することが重要です。これにより、豆の中で続いている化学反応が停止し、焦げの進行を防ぎます。多くのロースターは、焙煎機に付いている冷却トレイや冷却ファンを使用して、このプロセスを効率化しています。

これらの技術を適用することで、ロースターはコーヒー豆の焦げを最小限に抑えつつ、望ましい風味と苦味のバランスを達成することができます。

すべてのコーヒー豆に同じ焙煎プロファイルが適用されるというわけではなく、例えばナチュラルプロセスなど火の入りやすい豆、高地栽培された火の入りにくい硬めの豆など、それぞれの豆に応じて焙煎プロファイルを管理し、もっとも心地よい風味や苦味を引き出す技術が必要です。

https://encore-coffee.com/topics/entry-20230124

※私たちロースターがどんなことを考えながら焙煎しているかライトに書いたブログ記事です。

コーヒー豆の品種による苦味の違い

コーヒー豆の品種によって、味わいや苦味の特性が異なります。特に、コーヒー豆の主要な品種であるアラビカ種とロブスタ種は、風味特性が大きく異なります。

アラビカ種 (Arabica)
アラビカ種は、コーヒー豆の生産量の約60%以上を占めており、高品質な豆として広く認識されています。アラビカ種の特徴は以下の通りです。

味の特徴: アラビカ種は複雑な風味特性とフルーティーな酸味を持つことが多いです。苦味は比較的控えめで、繊細な風味が楽しめるため、高級コーヒーとして好まれます。
栽培環境: 標高が高い地域での栽培に適しており、昼夜で寒暖差があり、適度な湿度がある環境を好みます。そのため、コロンビアやエチオピアなどの高品質なコーヒーを生み出す国々で広く栽培されています。

ロブスタ種 (Robusta)
ロブスタ種は、世界のコーヒー生産量の約40%を占める品種で、特にインスタントコーヒーやエスプレッソブレンドによく使用されます。ロブスタ種の特徴は以下の通りです。

味の特徴: ロブスタ種は苦味が強く、ボディがしっかりしているのが特徴です。また、ナッティーで穀物のような風味があり、酸味はアラビカ種に比べると少ないです。
栽培環境: 熱帯低地で栽培されることが多く、アラビカ種に比べて病害虫に強く、気温や湿度の変化にも強いです。ベトナムやインドネシアなどが主な生産国です。

苦味の違い
アラビカ種とロブスタ種の最も大きな違いは、苦味の質と量です。アラビカ種の苦味は繊細で、酸味やフルーティーな風味とバランスが取れています。一方、ロブスタ種はその苦味がより強く、力強い味わいが特徴です。このため、エスプレッソや濃厚なコーヒーを好む方にはロブスタ種も選択肢に入ってきます。

最近ではファインロブスタという高品質なロブスタ種も出てきており、その動向には注目です。

これらの違いにより、コーヒー豆の選択は個々の好みや用途に応じて大きく異なります。高品質なアラビカ種を好む方もいれば、強い苦味が好みでロブスタ種を選ぶ方もいます。

カフェインの苦み

コーヒーに含まれるカフェインは、コーヒーの味わい、特に苦味に大きな影響を与えます。カフェイン自体には苦味があるため、コーヒー豆に含まれるカフェインの量は、その苦味の強さに直接的な影響を及ぼします。

カフェインの役割
カフェインは天然の苦味成分であり、コーヒーの風味に深みを加えることが知られています。苦味は多くの人にとっては好ましい特性であり、コーヒーの味の複雑さを増す要素として機能します。しかし、カフェインの量が多いと、その他の風味が覆い隠されることもあり得ます。

アラビカ種とロブスタ種のカフェイン含有量の違い
アラビカ種とロブスタ種ではカフェイン含有量が異なります。具体的には、アラビカ種はカフェイン含有量が比較的少なく、平均でコーヒー豆の重量の約1.2%程度です。一方、ロブスタ種はカフェイン含有量が多く、平均で約2.2%程度含まれています。約2倍ですね。

このため、ロブスタ種の方がアラビカ種に比べて苦味が強く感じられることが一般的です。ロブスタ種の苦味は、その高いカフェイン含有量により、より強く、時には刺激的な味わいを提供します。カフェインが強く影響する方や寝る前に飲むコーヒーとしてはロブスタ種は避けた方が無難です。

苦味への影響
カフェインの苦味は、単独で感じる場合とコーヒーの他の成分と一緒に感じる場合とで異なるかもしれません。コーヒーの風味は、酸味や芳香性成分といった他の成分とのバランスによって成り立っています。カフェインの苦味が強いロブスタ種では、その他の風味が苦味によって支配されることがありますが、アラビカ種ではカフェインの影響が少ないため、より繊細でバランスの取れた味わいを楽しむことができます。

コーヒーの淹れ方と苦味の関係

コーヒーの淹れ方が苦味に与える影響も非常に大きいです。主に抽出時間、お湯の温度、挽き具合、抽出方法が重要な要因となります。これらの要素を調整することで、コーヒーの苦味のレベルをある程度コントロールすることができます。

抽出時間
抽出時間が長いほど、コーヒーから抽出される成分が多くなります。初期の抽出では主に芳香性の高い油脂や酸味成分が抽出されますが、時間が経つにつれてより重い苦味成分が抽出され始めます。したがって、抽出時間が長ければ長いほど、コーヒーはより苦くなる傾向があります。

お湯の温度
お湯の温度もコーヒーの苦味に大きく影響します。一般的に、温度が高いほど抽出率が上がり、苦味成分もより多く抽出されます。理想的なコーヒーの抽出温度は約90°C前後とされています。この温度範囲を超えると、過剰に苦味や雑味が抽出される可能性があります。また苦味成分のひとつであるタンニンは90℃未満で抽出すると溶け出しにくい傾向にあります。

挽き具合
コーヒー豆の挽き具合も抽出速度に影響し、結果的に苦味にも影響します。細かく挽かれたコーヒーは表面積が広いため、抽出が早く進みます。そのため、細かく挽いた豆を使用すると、短時間で強い苦味を抽出することが可能です。逆に、粗く挽かれた豆はゆっくりと成分が抽出されるため、苦味がマイルドになります。

抽出方法
抽出方法によっても苦味の度合いが異なります。たとえば、エスプレッソマシンなどの抽出方法では、一般的に抽出圧力が高いため、強い苦味が得られやすいです。一方、ドリップのような方法では、低圧力でゆっくりと抽出するため、苦味が穏やかでバランスの取れた味わいになります。

これらの要因を理解し適切に調整することで、個人の好みに合わせた苦味の強さを持つコーヒーを淹れることが可能です。適切なコーヒー豆と適切な抽出方法を選択してあなたの理想的なコーヒー体験を作り出しましょう。

苦みの少ないフルーティーなおすすめのコーヒー豆


苦みを抑えたフルーティーな風味を楽しむなら、エチオピア産のコーヒー豆がおすすめです。エチオピアのコーヒー豆は、その独特の華やかさとフルーティーな味わいで、コーヒー好きやロースターから高い評価を受けています。

エチオピア・モカ
エチオピアはコーヒーの原産地としても知られ、その中でもモカ豆は特に有名です。この豆は、ベリーやシトラス類を思わせる明るく生き生きとした酸味が特徴で、ナチュラルプロセスの豆からはストロベリー、ウォッシュトの豆からはレモンティのような風味が感じられます。苦味が少なく、甘味と酸味のバランスが取れているため、フルーティーな味わいを好む方には特におすすめです。

おすすめの淹れ方
ペーパードリップやエアロプレスを使うと、豆のクリーンでフルーティーな風味が引き立ちます。お湯の温度は90°C前後が最適で、抽出時間は短めに設定することで、過剰な苦味を防ぎつつ豊かな風味を楽しむことができます。

おすすめの飲み方
このフルーティーなエチオピアは、ブラックでそのまま楽しむのがおすすめです。また、少し冷ましてから飲むことで、より多くのフルーティーな風味が口の中で広がります。

エチオピア・モカは、その独特な風味が世界中のコーヒー好きを魅了して止まない銘柄です。苦味が少なく、フルーティーで華やかな味わいを求める方には、ぜひ一度試していただきたいコーヒー豆です。

H2.あえて苦味を楽しむためのおすすめのコーヒー豆

苦味を堪能するためのコーヒー豆ならブラジル産やインドネシア産の豆が特におすすめです。これらの豆は、深い焙煎にも耐えうる強さと、コク深い風味を持っています。

ブラジル産コーヒー
ブラジルは世界最大のコーヒー生産国であり、その豆はナッツやチョコレートを思わせる味わいが特徴です。特にブラジルのコーヒー豆は、深煎りにすることでそのナッツ感がより強調され、心地よい苦味とともに独特の甘味が楽しめます。コクがありながらもバランスの良い味わいは、苦味を楽しむことができる理想的な選択肢です。

インドネシア産コーヒー
インドネシアは、特にスマトラ島のコーヒーで知られています。これらのコーヒー豆は、スパイシーでハーブのような風味が特徴で、深煎りすることでこれらの特徴がより顕著になります。インドネシアのコーヒーは、独特の重厚感と濃密なボディがあり、強い苦味とともに味わい深い甘みと風味が感じられるため、コーヒーの苦味が好きな方には特におすすめです。

おすすめの淹れ方
これらの豆はエスプレッソやマキネッタ、フレンチプレスでの抽出がおすすめです。エスプレッソは豆の風味を濃縮させ、フレンチプレスは豆の油分と風味をしっかりと抽出することができます。どちらの方法も、豆本来のコク深い苦味と複雑な風味を存分に引き出します。また豆の油分がほどよく苦味をマイルドにし、飲みやすくしてくれます。

おすすめの飲み方
これらのコーヒーは、特に朝のリッチな味わいを楽しみたい時や、味の濃いメインの食事やデザートと合わせるとより楽しめます。また、ミルクを加えることで、苦味の中にも柔らかな甘みが感じられますので、カフェオレやカフェラテにして飲むのもおすすめです。

ナッツ感のあるブラジル産やアーシーでハーブ感のあるインドネシア産のコーヒー豆は、苦味をあえて楽しむための良い選択肢の一つです。深い焙煎によるコク深い良質な苦味をぜひ見つけて楽しんでください。

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