コーヒーの知識

エスプレッソってなに?普通のドリップコーヒーとの文化と抽出の違い

2024.06.13
  • エスプレッソってなんで普通のコーヒーより濃いの?
  • イタリアの人って毎日エスプレッソ飲んでるってホント?
  • 結局エスプレッソとドリップコーヒーってどっちが美味しいの?

コーヒーが好きになるとこんな疑問浮かびませんか?当店ではエスプレッソとドリップコーヒーの両方を提供していますが、普通のドリップコーヒーだと思ってエスプレッソをご注文されるお客様や、エスプレッソを見たことないというお客様もおられます。

実は、エスプレッソとドリップコーヒーは、豆の焙煎方法から、抽出方法、そして文化的な背景まで、全く異なるものなんです。

今回は、エスプレッソとドリップコーヒーの違いを、歴史や文化的な背景も交えながら、分かりやすく解説していきます。

この記事を読めば、エスプレッソとドリップコーヒーへの理解が深まり、もっとコーヒーが好きになるはずですよ!

エスプレッソとドリップコーヒーの抽出方法の違い

エスプレッソとドリップコーヒーは、どちらもコーヒー豆から作られる飲み物ですが、その味わいは日本酒と焼酎ぐらい全然違います。それは、コーヒー豆からコーヒーを抽出する方法が違うためです。
エスプレッソとドリップコーヒーの違いは、料理でいうところの炒め物と煮物みたいなものです。同じ食材を使っても、調理法によって全然味が変わりますよね?
まずはエスプレッソとドリップコーヒーの違いを、抽出方法という視点から詳しく見ていきましょう。

エスプレッソの抽出方法

エスプレッソは、細かい粉にしたコーヒー豆に、高温高圧の熱湯を一気に通すことで抽出します。
まるで、コーヒー豆の旨味をぎゅっと搾り出すようなイメージです。そのため、エスプレッソは、ドリップコーヒーよりも濃厚で香味が強いのが特徴です。
良質なコーヒー豆で適切に抽出したエスプレッソにはクレマ と呼ばれる深い金色をしたきめ細かい泡の層が表面にできます。クレマが崩れる前に飲むエスプレッソは深い味わいと香りがあり、スタウトビールのコクのある泡を思わせてくれます。

抽出のプロセス

エスプレッソの抽出は、専用の機械を使って行うのが一般的です。まず、コーヒー豆を細かく挽いて、エスプレッソマシン専用のポルタフィルターに詰めます。
そして、マシンで加圧された熱湯をコーヒー粉に通過させます。この時、9気圧以上の圧力がコーヒーの粉にかかります。
エスプレッソの抽出時間は、だいたい約20〜30秒。短い時間の間に高い濃度のコーヒーを抽出するので、1秒ずれただけでも味わいが大きく変わったりします。

使用する機材

エスプレッソを抽出する際には、専用の機材が必要です。主なものとしては、エスプレッソマシン、グラインダー、タンパー、ポルタフィルターがあります。

  • エスプレッソマシン:エスプレッソを抽出する
  • グラインダー:エスプレッソ用の極細挽きができる専用のもの
  • タンパー:コーヒーの粉を押し固めるもの
  • ポルタフィルター:コーヒーの粉をセットし抽出するための道具

ドリップコーヒーの抽出方法

ドリップコーヒーは、熱湯をゆっくりとコーヒー粉に滴下させることで抽出します。エスプレッソと違って、圧力はほとんどかかりません。
コーヒー豆の香味をじっくりと時間をかけて引き出すようなイメージです。そのため、ドリップコーヒーは、エスプレッソよりもまろやかで、バランスのとれた味わいが楽しめます。

抽出のプロセス

ドリップコーヒーの抽出は、ドリッパーとフィルターを使って行います。まず、コーヒー豆を中挽き程度に挽いて、ドリッパーにセットします。
そして、熱湯をゆっくりとコーヒー粉に注ぎ、フィルターを通して滴下させます。ドリップコーヒーは、エスプレッソよりも抽出時間が長く、2〜4分ほどかかります。

使用する機材

ドリップコーヒーを抽出する際には、様々な種類の機材がありますが、基本的にはドリッパー、フィルター、ケトルがあればOKです。

  • ドリッパー:ペーパーフィルターをセットし、コーヒーを抽出するための道具
  • フィルター:コーヒーを濾過するための道具。紙や金属など素材は様々
  • ケトル:お湯を注ぐための道具。専用のものは注ぎ口が細い。

歴史的背景

エスプレッソとドリップコーヒーは、それぞれ長い歴史を持っていて、その誕生には、それぞれの文化や時代背景が深く関係しています。
まるで、歴史の積み重ねが、コーヒーの味を形作っているかのようですね。
ひとつひとつ積み上げられた形の同じレンガが、長い時間をかけて一方は大きな橋を作り、一方は城壁を作るかのように。
今回は、エスプレッソとドリップコーヒーの歴史を紐解いて、それぞれの魅力を探ってみましょう。

エスプレッソの起源

エスプレッソの起源は、19世紀のイタリアに遡ります。
当時、イタリアにはすでに数多くのカフェがあり、コーヒーは庶民に広く愛される飲み物となっていました。しかし、ナポレオンの台頭により大陸封鎖令が発令され、一気にコーヒー不足に陥ります。
当時「カフェ・グレコ」のオーナーが苦境をしのぐため、コーヒーの量を減らし、価格を下げた「デミタスカップ」でのコーヒーの提供を始め、これが大ヒットします。
その後、より濃厚で、短時間で抽出できるコーヒーの開発が求められるようになりました。そして、1901年にミラノで、世界初のエスプレッソマシンが誕生します!

イタリアのカフェ文化とその発展

エスプレッソマシンの発明は、イタリアのカフェ文化に大きな影響を与えました。
エスプレッソは、その濃厚な味わいと、短時間で抽出できる手軽さから、瞬く間に人気を博しました。そして、イタリアのカフェは、人々が集う社交の場として、発展を遂げていったのです。
今では、イタリアでは、エスプレッソは生活に欠かせない飲み物となり、カフェ文化は、イタリア文化の象徴と言えるでしょう。

ドリップコーヒーの起源

ドリップコーヒーの起源は、18世紀のヨーロッパにまでさかのぼります。
当時のヨーロッパでは、コーヒーは、主に粉末状のコーヒー豆を、熱湯に浸して抽出する「煮出し式」で飲まれていました。いわゆるトルココーヒーと呼ばれるものです。
しかし、18世紀後半に、フランスで、コーヒー豆を紙のフィルターで濾過して抽出する「ドリップ式」が考案されました。この方法は、コーヒーの味わいをよりクリアにすることができ、その後、世界中に広がっていったのです。

アメリカンコーヒーの流行と普及

ドリップコーヒーがアメリカで流行したのは、20世紀に入ってからです。
コーヒーを飲む習慣は以前からあったものの、日本でいうアメリカンコーヒーの由来と言われている浅煎りのコーヒーを薄く淹れたものが主流でした。
当時、アメリカでは、手軽に大量のコーヒーを抽出できる「パーコレーター」が普及していました。パーコレーターは、熱湯を循環させてコーヒーを抽出する仕組みで、大量のコーヒーを簡単に作れることから、家庭やオフィスで広く使われていました。
その後、1970年代には、ペーパーフィルターを使ったドリップ式コーヒーメーカーが開発され、100年以上続いたバーコレータ主流の時代が終わりました。
コーヒーメーカーの登場により、より手軽に美味しいコーヒーを淹れることができるようになったというわけですね。
現在のアメリカでは、ドリップコーヒーは一般的なコーヒーの飲み方となっています。
コーヒー全般の歴史については全日本コーヒー協会のこちらのページに分かりやすい年表がありますので、覗いてみてください。
https://coffee.ajca.or.jp/webmagazine/library/history/

文化的な影響

エスプレッソとドリップコーヒーは、単なる飲み物ではなく、それぞれの地域で、文化やライフスタイルに深く根付いた存在になっています。
ヨーロッパの石畳の街並みを彩るおしゃれなカフェ、アメリカの広々としたリビングでくつろぎながら楽しむ一杯のコーヒー。
それぞれのコーヒー文化に触れることで、エスプレッソとドリップコーヒーへの理解をさらに深めていきましょう。

エスプレッソとヨーロッパのコーヒーシーン

ヨーロッパ、特にイタリアやフランスでは、エスプレッソは生活の一部と言っても過言ではありません。
イタリアでは毎日のようにバールと呼ばれる軽食やお酒も扱うカフェのような場所に立ち寄り、エスプレッソを一杯ささっと飲んで仕事へ向かう人々に出会います。カフェは、人々の生活に欠かせない社交の場として、街の風景に溶け込んでいます。

エスプレッソの日常的な飲用習慣

ヨーロッパの人々は、朝起きたらまずエスプレッソを一杯、仕事前に同僚とエスプレッソを一杯、昼食後にもエスプレッソを一杯、と、一日に何度もエスプレッソを楽しむ習慣があります。
彼らにとって、エスプレッソは単なる眠気覚ましではなく、生活のリズムを刻む大切な儀式のようなものなのかもしれません。
また、エスプレッソをベースにした、カプチーノやラテなどのバラエティ豊かなメニューもヨーロッパのカフェ文化の特徴です。ミルクの分量や温度、ラテアートなど、細部までこだわった一杯を提供するカフェも多く、人々はそれぞれの好みに合わせてコーヒーを堪能しています。

ドリップコーヒーとアメリカのコーヒーシーン

広大な土地が広がるアメリカでは、ドリップコーヒーは、家庭やオフィスで、気軽に楽しまれています。
朝起きたら、コーヒーメーカーで淹れたドリップコーヒーをマグカップにたっぷり注ぎ、一日をスタートする。そんな映画のワンシーンのような風景が目に浮かびますよね。

ドリップコーヒーのカジュアルな楽しみ方

アメリカでは、ドリップコーヒーは特別なものではなく、生活の一部としてごく自然に楽しまれています。
スーパーマーケットには、様々な種類のコーヒー豆や、ドリップコーヒーメーカーが並んでおり、人々は自分の好みに合わせてコーヒーを選びます。
また、近年ではスペシャルティコーヒーと呼ばれる、高品質なコーヒー豆の人気が高まっており、自宅でドリップコーヒーを楽しむ人が増えています。丁寧にハンドドリップで淹れた一杯のコーヒーは、至福のひとときを与えてくれますね。
ちなみに僕が10年前にアメリカに旅行に行ったとき、妻の友人であるアメリカ人夫婦は毎朝フレンチプレスでコーヒーを淹れていました。現在は日本と同じく多様な淹れ方でコーヒーが楽しまれているようです。

代表的な飲み方とメニュー

エスプレッソとドリップコーヒー、それぞれ魅力的な飲み方ですが、実は様々なバリエーションがあります。
カフェラテやカフェモカなどエスプレッソをベースにした華やかなドリンクから、ドリップコーヒーのシンプルな味わいを楽しむものまで、その世界は奥深いものがあります。
色々な飲み方を知って、コーヒータイムをもっと楽しんでみませんか?

エスプレッソを楽しむ代表的なメニュー

エスプレッソは、そのまま飲んでも美味しいですが、ミルクや砂糖を加えることで、さらに味の幅が広がります。
濃厚なエスプレッソはベースの素材として最適です。まるで、画家のパレットのように、様々な素材を組み合わせて、自分だけのオリジナルコーヒーを作れるのがエスプレッソの魅力の一つです。

純粋なエスプレッソ

まずは、エスプレッソ本来の味を楽しむなら、「エスプレッソ」をストレートで味わうのがおすすめです。小さなカップに注がれた濃厚なエスプレッソは、まさにコーヒーの香味が凝縮された一杯です。
一口飲むと、深いコクと風味が口の中に広がり、その余韻を楽しむことができます。砂糖を加えても美味しいですが、良質なエスプレッソが飲めるコーヒー専門店でまずはぜひブラックで試してみて下さい。

カプチーノ、ラテなどのミルクを使ったメニュー

エスプレッソにミルクを加えたドリンクは、種類が豊富で、それぞれ違った魅力があります。
ミルクの他にキャラメルやバニラなどのフレーバーシロップを加えたフレーバーラテはスターバックスの登場により一気に人気になりました。

  • カプチーノ:エスプレッソに厚めのフォームドミルク
  • カフェラテ:エスプレッソになめらかなスチームミルク
  • カフェモカ:エスプレッソにチョコレートソースとフォームドミルク

ドリップコーヒーの多様な飲み方

ドリップコーヒーは、シンプルな飲み方だからこそ、豆の個性が際立ちます。様々な産地の豆を試したり、焙煎度合いを変えてみたり、自分好みの味を見つけるのも楽しいですね。
自分にとって最高の組み合わせを見つける過程はまるで宝探しのようにワクワクします。

ブラックコーヒーとしての楽しみ

ドリップコーヒーをブラックで飲むと、コーヒー豆本来の味をダイレクトに感じることができます。酸味、苦味、甘味、香りなど、豆の種類や焙煎度合いによって、味わいは大きく異なります。
同じ豆でも、抽出方法やお湯の温度、抽出時間によって味が変わるのも、ドリップコーヒーの奥深さです。自分好みの味を見つけるために、色々試してみて下さい。

フレーバーを加えたカスタムメニュー

ドリップコーヒーは、エスプレッソと同じくミルクや砂糖を加えても、もちろん美味しくいただけます。ミルクを加えることで、まろやかで優しい味わいになり、砂糖を加えることで、甘みとコクがプラスされます。
浅煎りのコーヒーに砂糖を加えると、果実感のある甘味が強調されることがあります。個人的には砂糖を加えるなら浅煎り、ミルクを加えるなら深煎りをおすすめします。
その他にも、シナモンやはちみつ、ホイップクリームなどをトッピングして、自分だけのオリジナルコーヒーを作ってみるのも楽しいですよ。

焙煎がもたらす違い

実はエスプレッソとドリップコーヒーでは、使用するコーヒー豆の焙煎方法も違います。
同じコーヒー豆でも、焙煎方法によって味や香りが大きく変わります。焙煎はコーヒー豆の可能性を引き出す職人技のような工程です。
今回はエスプレッソとドリップコーヒーの焙煎の違いについて詳しく見ていきましょう。

エスプレッソ用の焙煎の特徴

エスプレッソ用の焙煎は深煎りが一般的です。コーヒー豆を高温で長時間焙煎することで、苦味とコクが強く、濃厚な味わいになります。
深煎りのコーヒー豆は、まるでダークチョコレートのように、黒く光沢を帯びているのが特徴です。一般的なエスプレッソの濃厚な味わいは、この深煎りの焙煎によって生み出されています。
ただ、最近ではコーヒー豆の品質向上とスペシャルティコーヒーブームにより、浅煎りのコーヒー豆を使ったエスプレッソも主流になりつつあります。浅煎りのエスプレッソは深煎りのものとは違い、凝縮した果汁感のある甘味と酸味が特徴です。当店でも浅煎りのエスプレッソを提供していますが、若い世代を中心に人気です。

焙煎度合いとその効果

エスプレッソ用の焙煎は、主に「シティロースト」と呼ばれる、やや深めの焙煎度合いから、「フレンチロースト」と呼ばれる、最も深い焙煎度合いまで、様々な段階があります。
焙煎度合いが深くなるほど、苦味とコクが増し、酸味が減るのが特徴です。そのため、エスプレッソは、苦味が好きな人や、酸味を抑えたい人におすすめです。

ドリップコーヒー用の焙煎の特徴

ドリップコーヒー用の焙煎は、エスプレッソに比べて、浅煎りから深煎りまで、幅広い焙煎度合いが使われます。
浅煎りの場合は、フルーティーな酸味と香りが楽しめ、深煎りの場合は、苦味とコクが強くなります。ドリップコーヒーは、焙煎度合いによって、様々な表情を見せてくれるので、その日の気分やシーンに合わせて選ぶとよりドリップコーヒーを楽しめます。

焙煎度合いとその効果

ドリップコーヒーの焙煎度合いは、浅煎りから深煎りまで、大きく分けて8段階あります。それぞれの焙煎度合いに応じて、味や香りが異なり、好みに合わせて選ぶことができます。
一般的に、浅煎りのコーヒー豆は、酸味と香りが強く、スッキリとした味わいが特徴です。一方、深煎りのコーヒー豆は、苦味とコクが強く、濃厚な味わいが特徴です。

8段階の焙煎度合い

  • ライト
  • シナモン
  • ミディアム
  • ハイ
  • シティ
  • フルシティ
  • フレンチ
  • イタリアン

まとめ:どのように選ぶ?

ここまで、エスプレッソとドリップコーヒーの違いについて、見てきましたね。抽出方法から歴史、文化、そして焙煎方法まで、奥深いコーヒーの世界を垣間見ることができたのではないでしょうか。
でも、結局のところ、エスプレッソとドリップコーヒー、どっちを選べばいいの?と迷ってしまう人もいるかもしれませんね。
そこで最後は、それぞれのコーヒーの特徴を踏まえて、どんな時にどちらを選ぶのがおすすめなのか、僕の考えをまとめてみました。

味わいと体験の違い

エスプレッソは、濃厚な苦味とコク、芳醇な香りが魅力です。短い時間で、コーヒーの香味をぎゅっと凝縮したような一杯は、まさに気分転換や活動前にぴったりです。
一方、ドリップコーヒーは、エスプレッソに比べて、まろやかで、香り高く、リラックスしたい時や、じっくりとコーヒーを味わいたい時におすすめです。

あなたに合った選択肢の見つけ方

もし、あなたが、

  • 濃厚なコーヒーが好き
  • 短時間でコーヒーを楽しみたい
  • ヨーロッパのカフェ文化を楽しみたい

という場合は、エスプレッソがおすすめです。
反対に、

  • まろやかなコーヒーが好き
  • コーヒーの香りを楽しみたい
  • 自宅でくつろぎながらコーヒーを飲みたい

という場合は、ドリップコーヒーがおすすめです。
もちろん、これはあくまでも一例です。最終的には、自分の好みやその時の気分に合わせて、自由に選んでみてください。
色々なコーヒーを試してみて、自分にとって最高の1杯を見つけてくださいね!


他にもコーヒーにまつわるコラムを書いています。コーヒー片手にお楽しみください。
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