エルサルバドルの名門「ロス・ピリネオス農園」:革新と伝統が育む至高のスペシャルティコーヒー Story of Los Pirineos
2025.06.26こんにちは。Encore! Coffee Roasteryの杉山です。
今日はエルサルバドルの名門農園であるロス・ピリネオスをご紹介します!
ロス・ピリネオスがなければ今のエルサルバドルのスペシャルティコーヒーシーンはもっと違ったものになっていたと言っても過言ではないぐらい素晴らしい農園です。
エルサルバドル東部、緑豊かなテカパ火山地帯の頂上付近に位置するロス・ピリネオス(Los Pirineos)農園は、130年以上の長い歴史を誇る名門コーヒー農園です。その名は、ヨーロッパのピレネー山脈に似た地形であったという由来から名付けられました。

親子5代にわたるバラオナ家によって運営され、伝統を重んじながらも常に革新的な挑戦を続けることで、世界中から高い評価を得ています。
歴史:バラオナ家が紡ぐコーヒーへの情熱
ロス・ピリネオス農園の歴史は、バラオナ一族のコーヒー栽培への情熱の歴史そのものです。現在の農園主であるディエゴ・バラオナ(Diego Baraona)氏は、父である故ギルベルト・バラオナ(Gilberto Baraona)氏の遺志を継いでいます。
ギルベルト氏は、エルサルバドルのスペシャルティコーヒー界における伝説的な人物として知られています。彼は、農園内にエルサルバドル最大級の民間種子バンクを設立し、80種類以上ものコーヒー品種を収集・保存するという偉大な功績を残しました。これは、コーヒーの遺伝的多様性を守り、未来のコーヒー生産の可能性を広げるための重要な取り組みです。
彼の探求心と先見の明は、今日のロス・ピリネオス農園の礎となっています。

現在、主に栽培されているコーヒーの品種は、ブルボン、ティピカ、パカス、パカマラです。直近の収穫では、ディエゴ・バラオナが5年前にギルベルトと共に植えたSL28、ハラー、スーダン・ルメなどの追加品種を新たに収穫することができました。
ロス・ピリネオスのチームと家族は、清潔な設備を維持することに細心の注意を払い、最初から最後まで高品質な処理を保証し、処理、果肉除去、乾燥技術において常に最新の状態を保っています。
また2015年のワールドバリスタチャンピオンシップの優勝者であるオーストラリアのササ・セスティックが立ち上げたプロジェクト・オリジンはロス・ピリネオスと協力し、カーボニック・マセレーション処理を含む多くの実験的な処理技術を導入してきました。
Encore! Coffee Roasteryが現在販売しているKonga Honeyもプロジェクト・オリジンの日本法人がインポートしたものを買い付けたロットです。
恵まれた自然環境と飽くなき探求心
ロス・ピリネオス農園のコーヒーが特別な理由は、その土地特性を最大に活かした栽培環境と、品質への徹底したこだわりにあります。
- 絶好のロケーションと土壌: 農園は標高1,300〜1,600メートルに位置し、火山活動によって形成されたミネラル豊富な赤い火山性粘土土壌に恵まれています。この特有のテロワールが、コーヒーに複雑で奥深い風味を与えます。
- 理想的な乾燥環境: テカパ火山を見下ろす高台には、広大な乾燥場が設けられています。ここでは、十分な太陽の光と常に吹き抜ける風により、コーヒーチェリーを均一かつ安定して乾燥させることができ、クリーンで高品質なコーヒー豆を生み出します。
- 多様なコーヒー品種の栽培: 父ギルベルト氏が残した種子バンクを活かし、ブルボン、パカマラ、ティピカといった伝統的な品種はもちろん、ゲイシャ、SL28、スーダン・ルメなど、希少で実験的な品種の栽培にも積極的に取り組んでいます。「品種の森」と呼ばれる実験区画では、土地の気候や土壌に最適な品種を見つけるための研究が絶えず行われています。
- 精製方法へのこだわり: ロス・ピリネオス農園は、ウォッシュト、ナチュラル、ハニー(レッド、ブラックなど)といった多様な精製方法を駆使することでも知られています。それぞれの品種が持つ個性を最大限に引き出すため、収穫されたチェリーの状態を見極め、最適な精製方法を選択しています。この丁寧なプロセスが、雑味のないクリーンで甘さの際立つカッププロファイルを実現しています。
- サステナビリティへの貢献: 化学肥料に頼らず、シェードツリー(日陰樹)を利用した自然と共生する農法を実践しており、環境保全にも力を入れています。
味わいの特徴
ロス・ピリネオス農園のコーヒーは、栽培される品種や精製方法によって驚くほど多彩な表情を見せます。

当店が取り扱っているKonga Honeyも派手な分かりやすさというよりも口の中で刻一刻と変化していくように多様なフレーバーが広がっていきます。それがとっ散らかった印象にならず、しっかりと甘くまとまっていて、繊細な栽培と精製のコントロールを垣間見せられました。
先述したギルベルト氏は2018年にはエルサルバドル・コーヒー・ファーマー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、彼のコーヒーはカップ・オブ・エクセレンス賞をこれまでに17回受賞しています。
とんでもないですね。。
ロス・ピリネオス農園は、エルサルバドルの豊かな自然と、バラオナ家のコーヒーへの揺るぎない愛情が生み出した、まさに「至高のコーヒー」を生み出す場所と言えます。