もしも焙煎することが孤独の旅路であったなら

先日お世話になっている方に「どうしてカフェではなく、焙煎(ロースター)を選んだんですか?」というご質問をいただきました。

コーヒー屋としては嬉しいとてもいい問いだなぁと思うと同時にパッと「焙煎が好きだからです」と即答した自分に驚きました。

大抵自分のことを聞かれるとうーん…と変に考え込んでしまうことが多いんですが、ああ、これには明確な答えをちゃんと持っているんだと初めて気づかされた質問でした。

せっかくなのでちょっと内省してみます。

日々焙煎しています

コーヒーはもちろん好き。でも、ロースターを選んだのは、「コーヒーが好き」の前に「焙煎することが好き」が来ること。
コーヒーが好きだけだったら、多分お店はしてなかったはず。

一連の焙煎作業は営業時間中も含め、かなり長く時間がかかっているんですが、温度計以外は人間の五感でその都度焼き分けているので、焙煎機に張り付きになること、新鮮なものをお客様や店舗様にお渡しするため少量ずつ毎日焙煎しているということも関係しています。これは僕たちのコンセプトなので、簡単には変えられません。
焙煎って多分よほど好きじゃないと長くは続けられない仕事だよなぁと度々思います。

来る日も来る日も一対一で豆と向き合う。欠点豆を弾き、焙煎し、テイスティングし、データと経験を積み重ねていく。1000を超えると言われるコーヒーの香味成分。その組み合わせの宇宙で漂い、星を探し続けるような旅。同じ農園さんの同じ豆でもロットが違えばもちろん、季節や気温、天気が変われば同じ焙煎レシピが通用しない変則性。
もはや不思議のダンジョンシリーズです。1000回遊べるどころか1000万回遊べます。ちょっと孤独な内なる対話のような側面が多いです。

孤独と書いたけれど、それでも焙煎が好きなのは、自分が仕上げたコーヒーを誰かがカップに淹れてくれることで、その孤独の旅路を共有できる気がするからです。その過程がすごく楽しいし、やりがいでもあります。それがコーヒーの焙煎が好きな一番の理由です。

ちょっとだけ補足なんですが、孤独というのは一人で全部しているという意味合いではないです。ややこしや。
アンコールコーヒーは僕と妻で銘柄の選別、ハンドピックから焙煎、商品としてのチェック、仕上げまでの一連の作業をしています。そして最近ハンドピックを手伝ってくださる素敵な仲間も増えました。
なので、今回は焙煎の内省的な側面の多さに「孤独」という言葉をあえて選びました。あくまでもポジティブに。
特に釜を回しているときはどこまでも深く潜っていく感覚になります。

欠点豆を選別するハンドピック

最後に。
僕と妻が2人とも好きなニールヤングの「孤独の旅路」という曲があります。

ちょっと最初の一節を拙訳してみます。


生きていたい、寄与する者でありたい
ぼくは黄金の心を求め採掘する
ぼくが表現できないもの
それがぼくに黄金の心を探させている

僕たちの内省的なコーヒーの探求がどこかで誰かの豊かさに寄与できることを願って。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてください

この記事を書いた人

目次
閉じる