ノルディックローストとは?北欧の浅煎りコーヒー文化と背景
2024.07.24こんにちは、Encore! Coffee Roasteryの杉山です。
今日は北欧のコーヒー文化が生んだノルディックローストのお話。
みなさん、ノルディックローストってご存知ですか?
ノルディックローストは、北欧で主流の高温短時間の焙煎手法で、煌びやかな酸味とフルーティーな風味が特徴の浅煎りコーヒーに仕上がります。
この記事では、ノルディックローストの魅力とその楽しみ方について詳しく紹介します。
この記事を通して、ノルディックローストと北欧コーヒー文化の魅力とその楽しみ方をお伝えしていきます。ぜひ最後までご覧ください。
ノルディックローストとは?北欧の浅煎りコーヒー文化の魅力
ノルディックローストは、北欧で人気の浅煎りコーヒーを焙煎するための一つのアプローチです。特にフルーティーな風味と軽やかな口当たりが特徴です。
浅煎りのプロセスは、コーヒー豆の持つフルーティな風味を最大限に引き出すことが目的です。これにより、酸味が強調され、滴る果汁のような風味が楽しめます。
日本でもノルディックローストの手法を取り入れるロースターが増えてきましたが、一般的に認識されている浅煎りのコーヒーよりもさらに浅い焙煎なので、初めてノルディックローストのコーヒーを飲む方はびっくりするかもしれません。
ノルディックローストの基本知識
北欧の浅煎りコーヒー文化の背景
ノルディックローストの魅力
ノルディックローストの基礎知識
ノルディックローストは、高温短時間のプロセスで焙煎されたコーヒーです。このプロセスでは、コーヒーの生豆が短時間で高温にさらされることで、コーヒーの香気成分が急速に発達します。そして、苦味が十分に形成される前に焙煎を終えます。
このように書くと意外と簡単に思われそうですが、結構難しいです。
まず一般的にコーヒー豆の焙煎は10分前後から15分、長ければ20分近くかけて、生豆の水分をじっくりと飛ばし、緩やかに豆温度を上昇させながら香気成分を発展させていきます。
これがノルディックローストの場合、10分未満、もしくはプロファイルによっては5分前後で焙煎を終える場合もあります。
なので、適切に焙煎がなされていないと、豆内部に水分が残り、イガイガした酸っぱい味わいになったり、中まで火が通らず風味のない草っぽい味わいになるリスクが出てきます。
この辺りはやはり素材の生豆の状態を見極め、適切な温度管理を行えるロースターの腕の見せ所だと思います。
浅煎りなので、コーヒーの風味はフルーティーで酸味も比較的強くなります。果汁や花の蜜ような風味が顕著で、適切に焙煎されたノルディックローストのコーヒーは本当においしいです。
軽やかな口当たりと爽やかな後味が特徴で、特に冷めてからの甘みは魅力的です。
北欧の浅煎りコーヒー文化の背景
北欧の浅煎りコーヒー文化は、コーヒーの品質と風味に対する高いこだわりとともにあります。ヨーロッパ自体が品質の高いスペシャルティコーヒー市場の世界の約半数近くのシェアを占めていて、特にノルウェーとデンマークでは、スペシャルティコーヒーが普及しているそうです。
この地域では、コーヒーが日常生活の重要な一部で、カフェ文化が発展し、コーヒーの品質が重視されるようになりました。
北欧諸国、特にフィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマークは、世界でもトップクラスのコーヒー消費国です。その中でもフィンランドは世界一のコーヒー消費国として知られ、一人当たりの年間消費量が約12kgに達します。日本の年間消費量が3kg強らしいので、4倍近く飲んでいることになります。(参考WorldAtlas : The Top Coffee-Consuming Countries)
スターバックス発祥の地であり、コーヒーをたくさん飲んでいそうな印象のアメリカは25位。エスプレッソで有名なイタリアでさえ13位で、年間消費量はフィンランドの半分以下です。
北欧のコーヒー消費量が断トツで世界一な理由
北欧諸国でこれほどまでにコーヒーが飲まれている理由はいくつかあります。
- 気候:長く寒い冬を乗り越えるための温かい飲み物として、コーヒーが重宝されています。
- 文化的習慣:コーヒーを飲むことが日常生活に深く根付いており、一日に何度もコーヒーブレイクを取る習慣があります。
- 社会的機能:コーヒーが社交の場の飲み物として機能し、友人や家族との交流の中心的な役割を果たしています。
「フィーカ」(スウェーデン)や「カハヴィタウコ」(フィンランド)、「ヒュッゲ」(デンマーク)と呼ばれるコーヒーブレイクがあり、これらは単なる休憩ではなく、大切な人たちと一緒に時間を過ごすための重要な社会的慣習となっています。 - 労働文化:生産性を高めるため、職場でのコーヒー消費が奨励されている。特にフィンランドでは勤務中のコーヒー休憩が労働法により定められています。
- 高品質なコーヒー:北欧では質の高いコーヒーが一般的で、その味わいを楽しむ文化が発達しています。コーヒーの大会やロースターやバリスタ同士の交流も盛んです。
もはや生活の一部として完全にコーヒーが根付いていることが分かりますね。
このように、北欧のコーヒー文化は単に飲み物としての消費だけでなく、社会的つながりを強化し、休日や仕事中であっても、日常生活にリズムを与える重要な役割を果たしています。コーヒーは北欧の人々の生活に深く根付き、彼らのアイデンティティの一部となっています。
僕たちもこんな生活に根付いたコーヒー文化を自分たちの地域で作りたいなと本気で思っています。そしてそういうコーヒーショップが全国に増えていけば、日本全体のコーヒー文化はもっと素敵になるだろうなぁと。
ノルディックローストの味わいと特徴
ノルディックローストのコーヒーは、その独特の味わいと特徴で北欧諸国だけでなく世界中にファンがいます。
このコーヒーは一般的なコーヒー豆よりもさらに浅煎りのため、苦味が少なく、軽やかな口当たりです。焙煎時間も短いので、コク深さよりも果実のようなフレーバーが残りやすいです。
適切に焙煎されたノルディックローストのコーヒーは酸味こそ強めですが、酸っぱいというよりも生搾りの果汁感やスープのような爽やかさがあります。この風味特性が、他のコーヒーとは一線を画すポイントとなっています。
ノルディックローストのフルーティーな風味
ノルディックローストの一番の特徴は、果汁感のあるフルーティーな風味です。高温短時間の焙煎アプローチにより、コーヒー豆の果実のようなフレーバーを最大限に引き出しています。
当店でも、銘柄によってはノルディックローストの焙煎アプローチで仕上げたりしますが、他の豆と比べても焙煎のプロファイルはかなり異なります。
ボリビアのこのコーヒー豆は当店の浅煎りの豆のなかでもノルディックローストに近い高温短時間の手法で焙煎していて、柑橘系の煌びやかな果実感と花の蜜のようなすっきりとした甘さが特徴的です。
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何杯でも飲める軽やかな口当たり
ノルディックローストのコーヒーは、軽やかな口当たりと爽やかさが特徴です。このクリーンな軽やかさこそノルディックローストの最大の魅力だと思います。
上でも書いたように、北欧の人たちは1日の生活の中で何度もコーヒーブレイクをとるので、何杯でもすっと飲めるようなこのノルディックローストに行き着いたのかもしれません。
実際、軽やかな口当たりのコーヒーは、単体で飲んだり、食事と合わせたりと、どんな時でも楽しめます。
ノルディックローストを楽しむためのコツ
ノルディックローストのコーヒーを最大限に楽しむためには、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。適切な抽出方法や家庭での楽しみ方を知ることで、より豊かなコーヒー体験が得られます。
この記事では、ノルディックローストのコーヒーを楽しむための具体的なコツを紹介します。ぜひ試してみてください。
- 最適な抽出方法
- 家庭での楽しみ方
- おすすめのノルディックロースト豆
最適な抽出方法
ノルディックローストの浅煎りコーヒーを楽しむには、抽出方法も非常に重要です。
浅煎りのコーヒーは風味が繊細なため、淹れ方によっては味わいが平坦だったり、酸味が際立ったり、場合によっては薄くなりすぎたりします。
ここでは最も有名なノルディックローストのコーヒーショップ「TIM WENDELBOE」のハンドドリップレシピを参照してみましょう。
サイトは英語なので、日本語に要約したもので解説します。
参照:Brewing Guides https://timwendelboe.no/brewing-guides/
準備
水1リットルあたりコーヒー豆65グラムを使用(0.5リットルの場合は32.5グラム)
ハンドドリップの手順
- フィルターをすすぎ、予熱する
- コーヒー豆32.5グラムを計量し、挽く
- フィルターに挽いたコーヒーを入れ、容器にセット
- スケールをゼロにする
- タイマーを開始し、60グラムの湯を注ぎ、かき混ぜる
- 30秒後、200グラムまで湯を足す
- 円を描くように注ぎ、500グラムまで到達させる(全体で2.5〜3.5分)
- 抽出後、かき混ぜて完成
注意点
抽出時間が長すぎる場合は粗めに、短すぎる場合は細かめに挽く
使用後は必ず器具を洗浄する
ドリップマシンの場合
- 同じ分量で準備し、マシンにセット
- 抽出開始時に軽くかき混ぜる
- 3〜3.5分で抽出を完了させる
- 抽出後、かき混ぜて完成
ペーパードリップの場合、抽出時間は3〜4分が目安です。
お湯の温度についは言及はありませんが、浅煎りのコーヒー豆の華やかなアロマとフルーティな風味を十分に引き出すために90〜95度の高めの湯温でドリップしましょう。これにより、コーヒー豆のフルーティーな風味が引き立ちます。
他にポイントとしては、抽出途中に撹拌すること、粉全体が十分にお湯に触れていることが挙げられます。
家庭での簡単な浅煎りコーヒーの楽しみ方
家庭でノルディックローストのコーヒー豆を楽しむためのコツは、さきほどのハンドドリップのような比較的導入しやすい方法で最大限の風味を引き出すことです。
まず、豆の鮮度について。浅煎りの豆は基本的に豆のままだったら焙煎日から2ヶ月程度は甘味も増していき美味しく飲めますが、それ以上経ってくると、風味が繊細な分、劣化も目立ちます。
次に、グラインダー(コーヒーミル)。ミキサータイプのプロペラ式の電動ミルは粉の粒度を揃えることが難しく、微粉や大きい粒が混ざります。そうすると、せっかくの繊細な風味が損なわれてしまいます。
できれば金属かアルミ刃のハンドミルか、プロペラ式以外の電動ミルを使いましょう。均一に挽かれた豆であればクリーンでバランスの良い風味を抽出できます。
ご自宅にコーヒーミルがない場合は、コーヒーショップで挽いてもらっても大丈夫です。粉に挽いて購入した場合は劣化が早まりますので、1、2週間で飲み切ることをおすすめします!
日本でも買えるおすすめのノルディックロースト
日本でも入手できる有名なノルディックローストのコーヒーショップをご紹介します。北欧の品質と風味をぜひ試してみてください。
- Tim Wendelboe(ノルウェー)のLight Roast
- Fuglen(ノルウェー)のFilter Roast
- La Cabra(デンマーク)のシングルオリジン
これらのロースターはどれもノルディックローストを代表する超有名店です。
特にTim Wendelboeはコーヒー界の神様と呼ばれたりもする名店です。バリスタの世界チャンピオンにもなっています。
Fuglenに関しては日本にも店舗があり、日本語のウェブショップもあるので、簡単に購入できます。東京の店舗で一度飲んだことがあるのですが、透明感のある甘い果実感のおいしいコーヒーでした。
ちなみに当店は個人的にTim Wendelboeのコーヒー豆をノルウェーから何度か取り寄せて飲んでいます。体感的にはだいたい注文から2週間ぐらいで届く感じです。きちんと注文日前後の新鮮な焙煎日のものが届きました。
写真はTim Wendelboeがコロンビアに所有する自社農園で収穫されたコーヒー豆で、ひとつはフレーバー欄にあまり見たことのないハバネロの文字があり、びっくりしました。
味わいはというと、赤のパッケージの方は、ミネストローネや野菜スープのような出汁感のあるすっきりとした味わいで、新鮮なフルーツトマトのような風味が特徴的でした。味わいとしてはケニアのコーヒーにかなり近いです。
もう一方のハバネロの文字があった灰色のパッケージの豆は、正直僕たちも初めて味わうタイプのコーヒーで、素焼きして甘みが出てきたししとうや万願寺とうがらしを思わせるフレーバーでした。
書きながら、そんなコーヒー美味しいのか?って思われそうな気がしているのですが、いや、おいしいんです。。もちろん、コーヒーとしての良質な味わいが前提としてあって、その上にトマトやししとうのような特徴が乗っかっている感じです。
自分でももはや何を言っているんだという説明なんですが、これ以上は文字で説明しようがないので、ぜひ機会があれば飲んで確かめてみてください。
ノルディックローストの魅力を再確認しよう
今回の記事では、ノルディックローストの基本情報から、その独特の味わい、そして楽しむためのコツについて紹介しました。
- ノルディックローストの特徴を理解する
- 最適な抽出方法を試す
- 日本でも買えるおすすめの豆を探す
ノルディックローストのフルーティーな風味と良質な酸味を楽しむためには、適切にエイジングされた新鮮な豆(焙煎日から2、3週間までが目安)と適切な抽出方法が鍵です。
ぜひ、今回紹介した方法を試して、ノルディックローストの魅力を最大限に楽しんでください。
当店のコーヒー豆でノルディックローストに近いおすすめ豆は先ほども紹介したボリビアです。よかったらお試しください!
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ノルディックローストの記事のあとはこちらの記事を見ていただくと、より浅煎りコーヒーの理解が深まります!
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